「月刊ととろ」第146号 web版

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 昨今、ニュースやインターネット等でよく目にする、「虐待」という言葉。 皆さんは、この言葉について、どのような意識を持っているでしょうか。
 私は昨年12月、東京にある国立病院機構本部で開催された、「虐待防止対策勉強会」に参加しました。2日間に渡って開催されたこの勉強会は、虐待に関する専門家・施設従事者・重症心身障害児(者)の親、という3つの立場の方々の講演を聞けたり、全国の国立病院から集まった様々な職種の人たちとグループワークや事例検討を行ったりと、非常に充実したものでした。
 そんな中で、私が最も印象に残ったのは、「『虐待』 を防止するには『疑わしい事案・不適切な支援』を早期発見する」ということです。私は、虐待は既に起きている事案であり、それを防止するには虐待現場に介入し、虐待者を注意することしか手立てがないと思っていました。しかし、虐待に結びつく「小さな芽」を摘まんでいけば、虐待は十分に防止でき、患者さんの生命や権利を守ることはできるのです。
 そして、それを医療・福祉に関わる全ての人間が意識して、取り組んでいくべきなのです。 小さな芽、すなわち疑わしい事案や不適切な支援というのは、思いのほか身の回りに多く潜んでいます。患者さんを呼名するとき、おむつを交換しているとき、食事を介助しているとき、もっと細かく見ていけば多くの場面が挙げられることでしょう。 それらの場面で見かけた「この支援はおかしいのでは?あの態度はふさわしくないのでは?」と思うこと、それが小さな芽なのです。 小さな芽を見逃さずに摘んでいくこと、それが患者さんを守る第一歩なのだと、私は強く感じました。
 この勉強会は、私がこれからの支援で実践していくべきことを考えさせ、日常でよく聞く「虐待」という言葉に関して、たくさんの学びを与えてくれました。 私一人でできることなんてほんの少しのことしかないけれども、そのほんの少しを皆で取り組んでいくことができれば、きっと患者さんも職員もHAPPYになるのではないでしょうか。

146ttr14_16 最後に、この記事を読んでいただいた皆様に、生意気ながら問わせていただきます。 平成26年度の福島県における虐待の通報件数は、2件でした。 その前年度は、なんと1件でした。 インターネット等で調べていただければすぐに分かると思いますが、身障手帳交付者数や施設数、福祉従事者数から見ると、驚異的なパーセンテージが導き出せ、素晴らしい数字であると思います。 しかし、私は初めてこの数字を知ったとき、心がもやもやしました。 さて、皆さんはこの数字に何を感じ、何を思いますか?

療育指導室 児童指導員 : 小山 直也

 

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療育指導室とは

 病院は患者さんの生命維持を前提に、病気や怪我を治療するのが当然の使命ですが、当院は、重度の身体障がいと知的障がいを併せ持った方々が療育する生活の場でもあります。 言い換えますと、当院は医療の現場であり、福祉の現場でもあります。 勿論、病院ですので医師をはじめ医療職が中心ではありますが、私達の療育指導室は福祉職として医療職と連携しながら、療育生活を支える役を担っております。
 具体的に療育指導室では、日常生活の援助・指導・療育活動などの日中活動支援を行い、また、ご家族への支援、市町村や相談事業者など関係機関との連絡調整や手続き、更にご自宅で生活されている方の短期入所や日中一時支援などの受入調整なども行っています。
 また、廊下や壁面の装飾、プランターや花壇整備などの環境づくりに努め、各種行事やイベントを催し、療養生活に少しでも潤いと安らぎを感じて頂けるよう努力しております。

療育指導室長: 高橋 忠明

 
 
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 失行を最初に記載したLiepmannは、失行を「運動執行器官に異常がないのに、目的にそって運動を遂行できない状態」と定義しました。失行患者は麻痺や失調などの運動障害が無いにも関わらず、習熟したはずの行為が困難となります。例えば、手指でチョキを作るように指示され、内容を理解できたにも関わらず、別の指を立てたり異なる形を作ったりします。今回は代表的な失行の種類について述べます。
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①観念運動失行
物品を使用しない単純な動作や、単一物品を使用した動作が困難な状態です。代表的な物を挙げると、敬礼やおいでおいでの動作が出来ない、歯ブラシで歯を磨く動作を身振りで行う事が出来ない等です。誤りのパターンとしては、目的と異なる動作への置換や意味不明な動作などがみられます。②観念失行
個々の運動は可能であるが、一連の系列的操作(ローソクに火を点ける等)が障害された状態です。観念失行があると、個々の動作自体には誤りは無いが、動作間の順序を誤ったり、必要な動作をし忘れたりしてしまいます。

③肢節運動失行
運動障害が無いにも関わらず、手と指による動作の遂行が粗雑になってしまいます。ボタンをはめる、物をつまむ等の熟練動作が極端に不器用な状態です。運動の取り違えは見られません。

④着衣失行
着衣に必要な運動能力が保持されているにも関わらず、着衣動作が困難な状態です。患者は服の上下左右が見つけられず、袖ではない部分に手を通そうとしたりします。

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 患者の家族などは、失行について正しく認識できていないことが多いといわれています。失行という障害の存在により、道具の使用等が困難になっていることを認識していただく必要があります。本人が使いやすい道具を用いる、使いやすい場所に置く等日常生活環境を整え、出来る事はなるべく本人がやるように、働きかけていくことが重要とされています。

リハビリテーション科 言語聴覚士: 渡邉 大介
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146ttr23_04 以前、婦人科病棟に勤務していた頃の出来事です。その病棟は手術を受ける患者さんを始め、手術前後の化学療法や放射線療法、終末期の看取りの患者さん等が入院しており、入退院も頻繁で常に慌ただしい雰囲気でした。その中に卵巣癌で手術を受けた後、化学療法で入退院を繰り返していたSさんという患者さんがいました。その患者さんは30代半ばとまだ若く、就学前の小さな子供が一人いたのですが、旦那さんが仕事終わりに子供を連れて面会に来ており、面会時間ぎりぎりまで母子一緒に病室のベッドの上で過ごしている姿をよく見かけました。Sさんはとても物静かな方で、あまり自ら訴えるということがない印象があり、化学療法の副作用に対してもじっと我慢しているような患者さんでした。
 ある夜勤勤務の日、消灯前の巡回でSさんのもとを訪れた私に対し、どんなきっかけだったかは思い出せませんが、子供がまだ小さいのに一緒にいてあげられない事や、子供が大きくなるまで生きていられるか不安な事等をぽつぽつと話してくれました。そして最後に私に対して「あなたとこんな話をするのは初めてね。こんな話をすることがあるとは思わなかったわ。」と言われたのでした。その時、私は初めてSさんの本当の想いを知り、今までいかに表面的にしか関われていなかったかということを痛感しました。そして、この患者さんとの今までの自分の関わり方を振り返った時、日々の業務に追われて余裕がなくなり、場を設定して患者さんひとりひとりの想いをゆっくりと聞く、ということが出来ていなかったことに気付いたのです。そんな私の雰囲気を察し、Sさんは不安な思いを押し殺し一人でいろいろと悩んでいたのだと思います。女性として、また、妻として母親としての役割に対する喪失感や死に対する恐怖感等に対して、精神的援助が重要であるということは認識していました。しかし、日々の煩雑な業務の中で、いつの間にか患者さんの心に寄り添う、という看護の本質が疎かになっていたのでした。
 精神的援助を行う、と言葉にするのは簡単です。しかし、本当に患者さんの視点に立って患者さんを理解する、ということはなかなか難しいことであり、ともすれば自分の想いを押し付けてしまうことがあります。これは何も患者さんと看護師の間だけの問題ではなく、人と人が理解し合うための基本姿勢ではないでしょうか。対人関係が苦手で、私が患者さんに対して一歩引いて接していたことを感じていたSさんが、その一歩を踏み出してくれたことで、私が自分に欠けているものに気付くきっかけを作ってくれたのでした。それからは、相手の想いを受け入れたいという姿勢を意識して接することを心掛けてきましたが、まだまだ至らず、これからも努力を続けていかなければと改めて決意を新たにしています。

看護師長(医療安全管理係長) : 菊地 春恵

 
 

豆まき会

 2月3日(水)に毎年恒例の豆まき会がはまなす、はまぎく病棟で行われました。はまぎく病棟では、節分クイズや福が舞い込んでくるように福笑いをしました。クイズは、3択問題だった為、患者さんと一緒に考えることが出来、なるほど!と思うような問題もありました。福笑いは、お福さんと鬼を作りましたが、鬼の顔は鬼らしからぬ仕上がりになっていました。みんな、豆まきと笑いで鬼を退治しました。
146ttr23_12 はまなす病棟では、午前と午後にわけて豆まき会を行いました。節分にちなんだ劇遊びを行い、おじいさんと青鬼、赤鬼が登場し、「うおー」という台詞は、患者さんがしっかりと声を出して参加することが出来ました。そのあとは、赤鬼の他、インフルエンザ菌マン、ノロウイルス菌マンもやってきて豆まきをして退治し、みんなで楽しく過ごしました。

療育指導室 保育士: 矢内 直美
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 これまで14回にわたり「ヒトが歩くという事についての考察」と言うタイトルで、ヒトをヒトたらしめている最大の要因である直立二足歩行が如何にして可能となったのかを人類進化論的、比較動物学的立場からと、筋・骨格系及び脳の発達という面から考察し、如何に精密に脳が直立二足歩行をコントロールしているかについても紹介し、その結果人類にどのような光と影をもたらしているのかなどについて論述してきました。いささか難しい面もあったかもしれませんが最後までお付き合い下さり有難うございました。この連載によりいささかでも人類進化の妙を感じていただければ望外の幸せに存じます。なお個々の脳・脊髄の詳細な機能、歩行障害を来たす疾患と治療法などに関しましては一切割愛いたしましたが、もし興味がお有りであれば改めて連載いたしましょう。

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