「月刊ととろ」第139号 web版

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 国立病院機構いわき病院では、いわき地区の医療レベルの向上、患者さんの療養環境改善のため、これまでもいわき地区医療関係者、介護関連施設の方々のために地域医療研修会を開催してまいりました。
 さて平成27年度の第3回研修会はこれまでとはちょっと趣を変え、11月20日(金曜日)スパリゾートハワイアンズにて、国立病院機構東名古屋病院神経内科部長の餐場郁子(あいばいくこ)先生をお招きし、転倒・転落事故防止のための講演を予定しております。と申しますのは、私達はこれまでに多くの研修会を催し、如何に健康で有意な生活を長く送るか(健康寿命の延長)をお伝え致してまいりましたが、もともとヒトは解剖学的に無理な直立二足歩行を選択したために重心が高く(第2仙椎前方)、更に老化とともに不可避的に訪れる筋力低下、反射・運動能力の低下、眼・耳などの感覚機能の低下などにより転倒・骨折のリスクが増大し、それが前述した健康寿命を著しく短縮させるからです。
139ttr14_13 左図は最新の要介護に陥る原因疾病の円グラフです。皆さんはこのグラフを見て如何思われるでしょうか?「なんだ、骨折・転倒・転落が重要といっても要介護要因のたかだか10%程度であれば、大した事ないではないか、そんなに大げさに言う必要は無いではないか?」と思われるかもしれません。しかし、このグラフは、これまでに曲りなりも自立し息災であった人が要介護に陥る要因を原因別に示したものであり、既に他疾病により要介護状態にあった方々が更に転倒・転落・骨折により一段と重い要介護状態に陥った患者を含んではおりません。皆さん既にご承知であり、更にはこのグラフでも確認できますが、要介護状態を招く4大要因は脳卒中、認知症、高齢による衰弱(老衰)、骨・関節疾患であります。例えば脳卒中後遺症である片麻痺あるいは骨・関節疾患は歩行の安定性を大きく阻害しますし、認知症は身の回りの危険な状態に対する判断力の低下をもたらしますし、老衰は、たとえ周囲の危険状況を的確に判断し得ても適切な回避能力の低下を招きます。
 従いまして、これらの疾患を一つでも有する方は、転倒・転落・骨折のリスクが極めて高く、健康寿命は申すまでもなく、生命予後自体を短縮させる大きな要因となります。また、これらの疾患を併せ持つ患者さんも非常に多数いらっしゃいます。東名古屋病院神経内科医である饗場先生は厚生労働省の転倒・転落研究グループ代表として神経内科医だけでなく老人医療に関わる老年内科、整形外科医など関連科の医師、看護師、薬剤師、リハビリに携わるスタッフ、栄養士などの医療従事者のみならず患者さん御自身と御家族まで参加していただき、如何にして転落・転倒による生活能力の低下、健康寿命・生命予後の短縮化を防ぐかに心血を注いで研究し、その成果を実践してまいりました。先生のお話は全ての職種の医療従事者、介護施設職員のみならず患者さん及び御家族にも極めて大きい示唆を与えるものと思います。
 今回は通常と異なり、本年太平洋島サミットが開催されましたスパリゾートハワイアンズで開催されます。どうか出来るだけ多くの隣人と誘い合って御参加いただけることを希望いたします。
副院長:尾田 宣仁
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 今回の地域連携研修会は、「摂食嚥下機能障害患者への支援方法」というテーマで開催させて頂きました。研修の前半は、摂食嚥下機能の仕組みや当院で実施されている評価方法、患者様に対する介助方法についての講義を行いました。後半は、実技を取り入れ、二人一組になり、介助する側・される側の気持ちを理解しながら、お互いに食物を食べて頂きました。
 参加者の中には初対面の方とペアになった方もおり、信頼関係が構築されていないだけでも介助することの難しさを実感されたかと思います。介助される側の方からは「一口量が多かった」「予想と違ったタイミングで食物が入ってきた」など普段と異なった食べ方やペースのため戸惑いがあったという意見が多数でした。
 「食べる」ということは生きる上で大切な位置にあると考えます。単なる栄養摂取だけが目的ではなく、家族や友人などの談話の場所、生活の楽しみなど、食事を通して多くのことが得られます。また、病気や障害で食べることが不自由になったとしても、周囲のサポートにより食べることを続けられる可能性が広がります。まずは、患者様を取り巻く方々が顔を合わせ協力することが必要です。摂食嚥下障害の方が一口でも長く食べる楽しみを継続できるように今後も努めていきたいと思います。
リハビリテーション科 言語聴覚士:樋口雄一郎

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新任者自己紹介

 7月より、はまぎく病棟に勤務しております菊池小夜香です。
 今までは主に透析医療に携わってきました。重症心身障害児( 者) との関わりは初めてで、コミュニケーションの取り方など戸惑うことも多くありますが、病棟のスタッフの方々に助けて頂きながら日々頑張っています。
 早く看護師として成長し、皆様のお役に立てる様に努めていきますので宜しくお願い致します。
はまぎく病棟 菊池 小夜香
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防災訓練を終えて

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 7月17日防災訓練を行いました。私たちのはまぎく病棟からの夜間出火想定での実施でした。病院は、患者さんの生活の場であり、日常生活に不自由をかかえる患者さんを守る看護職は、施設内において、自衛消防隊員として位置づけられています。自衛消防隊員のつとめは、火災予防、初期消火、避難誘導などの初期対応です。私達は日頃から、避難経路の確認、誘導方法など病棟で話し合いを行い、確認してきました。そのため、防災訓練も普段話し合っている通りに行えば大丈夫だと思っていました。しかし、実際行ってみると、職員同士の業務分担や指示が上手く伝えられませんでした。また、避難経路の折り畳み式スライドドアの開放に思いのほか手間取ってしまったという課題が残る結果となりました。冷静に行動する事の難しさを実感しました。わかっていることと出来ることは違うので、災害発生時、病棟内で対応出来るように実施訓練を重ねることが必要です。
 災害が起きないのはもちろんですが、万が一にも災害が起きた場合には患者さんの安全確保が出来るように、これからも病棟および病院全体で取り組んでいきます。
看護師:七海 深雪 金成 晶子

 

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139ttr23_16 10数年前民間の病院で呼吸器病棟に勤務しておりました。病院の理念が、患者様の立場に立った医療の提供ということで、一人一人の患者様に合った医療・看護の提供をすべくスタッフも日々努力しておりました。医療情報も多くなり、患者様の医療に対する意識も高くまた、医療・看護に対する要求も高まってきた頃でした。
 入院中の60歳代の女性Aさんは、肺気腫、気管支喘息で気管切開カニューレ挿入、酸素を使用していました。喘息発作が出ると息が吐けなくなり、皮膚にチアノーゼを来したり、意識レベルが低下することがしばしばありました。本人の話したいという希望により日中スピーチカニューレを導入しましたので言語的コミュニケーションが可能でした。Aさんは自分の意見をしっかり持っている方で、看護への要求も高く、Aさんのケアに入るとなかなかAさんの希望通りに痰を吸引したり、体位を整えたりすることができず、対応に時間がかかりました。私はAさんの受け持ち看護師でしたので、スタッフが統一した看護が提供できるよう情報を共有してケアに当たりました。
 あるとき私がAさんのケアをしていると、突然「あんたは、冷たい」と言われました。私はどういう意味か分かりませんでしたが、さらに「丁寧な言葉を使っているけど、それが他人行儀で冷たいんだ。」と言われたのです。学生時代、患者様は殆どが自分より年上で、「人生の先輩なのだから、思いやりと尊敬の念を持って対応すること。」と学習しそのように心がけていましたので、自分の行動が「冷たい」と全て否定されたようでショックでした。だからといって、突然フランクに話すこともできず、悩みました。
 確かに私は人見知りのところがあり、看護に必要な技術であるコミュニケーションが実は苦手でした。「看護師、向いてないかな・・・」と考える日々でした。そのような中でもAさんとの関わりは避けることができません。するとある時Aさんが「あんたは、痰をちゃんと採ってくれる。他の人はちゃちゃっと上の方だけやって、採って欲しい所を採ってくれない。」と言われたのです。よくAさんは「もっと下、もっと下にあるんだ。」と吸引の時に痰が残っていることを訴えていました。「本当なのかな?」と思いつつなかなかうまく採れないのですが、患者様の訴えに耳を傾け、患者様の立場に立つことで、技術にも心を込めて出来ていたのかなと思います。「冷たい」と言われた時期にはAさんに対する苦手意識がAさんに伝わっていたのかも知れません。看護は観察からといわれます。しかし患者様はナースをそれ以上に観察しているのだと学んだ関わりでした。
139ttr23_20 Aさんは自宅退院することができました。在宅酸素、訪問看護の調整、自宅訪問による家屋評価と改築。そして退院、退院後訪問という流れは、本人の希望を叶えたいというスタッフ一人一人の思いと、家族の協力、というあらゆる調整が整って迎えた結果だと思います。今思い返しても、自分の看護師としての自信につながるケースだったと胸があたたかくなるのです。
はまなす病棟 看護師長:遠藤 京子
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 文字の発明以降の所謂有史時代以降の遺物は記載文献と照らし合わせることで年代測定が可能です。しかし文字の発明以前の遺物、たとえば石器とか土器、屋久杉などの生物化石、更に私が、このコラムで対象としている化石人類や恐竜などの古代生物や隕石の年代測定はいかなる方法で推測されるのでしょうか?
 一般的には放射性同位元素測定法という方法が用いられています。放射性同位元素というのは元素、たとえば皆様になじみの深い元素番号1番の水素 元素の原子核は通常は陽子1個中性子0個で質量数(陽子と中性子の数を足したものの事)1です。ところが水素の中 にはごく少量ですが陽子1個のほかに中性子を1個、更には2個持ったものもあり各々重水素、三重水素と呼ばれております。ちなみに元素番号は陽子の数で決定されますので、全て水素元素なのです。これら重水素、三重水素は質量数1の水素原子に比べ極めて不安定でベーター線などの放射線を放出し安定体に戻ろうと致しますので放射性同位元素と言います。同様に他の元素も陽子数は同じですが中性子数が異なる、微量ですが多くの同位元素を持っております。放射性同位元素は放射能を放出崩壊し段々その量を減らしていきますが、元の量の半分になる期間(これを半減期と言います)は、数分から数十億年と極めて幅はありますが、一定しておりますので、それを測定し年代推定が可能です。この放射性同位元素測定法で最も有名なのは、皆様も一度は耳にしたことがあると思いますが、陽子数6個、中性子数8個を持つ質量数14の炭素元素C14測定法です。
 炭素はあらゆる動植物の体を構成する有機物の基本ですので、有機物さえ残っていれば、C12に対するC14の量を調べ年代を決定する事が可能です。しかしC14の半減期は大体5730年で、どんなに精度を上げても6万年以上は測定できませんし、骨化石のように有機物を含まない対象物は測定できません。従いまして人類や恐竜、絶滅した古代生物の化石はC14ではなく、半減期のもっと長い他の放射性同位元素、たとえばカリウムやウランの同位元素を用いて年代測定をしております。ただ全ての放射性同位元素測定法の共通する弱点として、地球環境、同位元素比率が現在と同じと言う前提条件で計測しております。
 ちょっと考えればすぐお分かりのように、これまで火山活動、太陽活動、宇宙線、気候などは大きく変動いたしておりますのでこの仮定は厳密には成り立ちえません。従いまして現在信じられている「恐竜は6500万年前、巨大隕石の衝突で絶滅した」というのも、将来書き換えられるかもしれません。

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