「月刊ととろ」第138号 web版

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 近年、運動機能低下の原因として筋肉量の減少が注目されており、「サルコペニア」と呼ばれるようになりました。筋肉量の評価にはいろいろな方法がありますが、微弱な電流を流して体成分を分析する生体電気インピーダンス法がよく用いられます。当院にもこの方式による装置が導入されており、診療に活用しています。また筋肉量減少による筋力低下の評価は握力で行うことが一般的であり、男性では26kg、女性では18kg程度が診断基準となっています。サルコペニアの一次的な原因は加齢ですが、運動不足、栄養障害や各種疾患の存在も影響してきます。
 筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、パーキンソン病などの神経難病の患者さんでは、疾患の進行につれて運動機能や摂食機能が障害されてくるため、容易にサルコペニアの状態に陥ってしまいます。また嚥下能力も低下してくることが多いため、定期的に評価する必要があります。一般的なスクリーニングテストとしては反復唾液嚥下テスト(30秒間に空嚥下が3回以上可能かどうか)、改訂水飲みテスト(冷水3mlを口腔内に注入し、嚥下や呼吸の状態を観察する)などがありますが、より詳細な所見を得るためには嚥下造影が有用です。これはバリウムなどのX線を透過しない物質を混ぜた模擬食をX線テレビ装置の前で摂取していただき、その状況を観察するとともにビデオに録画し、詳しく分析するというものです。これにより舌から咽頭、食道へと食物が送り込まれる様子が詳細に把握でき、適切な食事形態や摂食に適した姿勢の選択が可能となりますし、経口摂取が困難と判断された場合は胃瘻の造設などを検討することとなります。

ttr138p1p4_21  全身の随意運動が障害される筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者さんの場合、1筋萎縮と筋力低下が進行しつつある初期と、2呼吸障害、嚥下障害が悪化して人工呼吸器装着や胃瘻造設を施行した進行期とでは、栄養療法の方針が異なります。すなわち初期には基礎エネルギー消費が亢進しており、ここに筋肉量の減少や嚥下障害が加わると急激な体重減少をきたします。これは生命予後不良の徴候とされており、食事形態などを早期から工夫していくことが望まれますし、胃瘻を造設する方針であれば、なるべく早期に実施しておくようにします。一方、病状が進行して四肢の筋力がほとんど失われ、人工呼吸器を終日装着するようになった段階では、逆にエネルギーの過剰摂取に注意が必要となります。一日700~800kcalでバランスがとれていることも多く、体重や中性脂肪値などを参考にして適宜調整します。その他の神経難病の患者さんでも病状に応じて適宜栄養療法の変更を行う必要があり、そのためにも定期的な体重測定や血液検査などを行うことが重要です。また肺炎などの感染症の合併により急激な栄養状態の悪化をきたし、その後感染症が治まってもなかなか元の状態にまで回復しないこともよく経験します。したがって、日頃よりできるだけ感染症を引き起こさないように注意することも大切です。
院長 関 晴朗
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~バスハイク~
 外出の行事ですが、普段、病院内での生活ということもあり、なかなか外へ出掛ける事の出来ない患者さんを少しでも外へ出る機会をという思いから、患者さんの病状などを考慮しながら、年に1回ではありますが1日コース、半日コース、院内での院内レクリエーションの3つに分れて行っています。今回は、バスハイクを紹介します。

☆バスハイク1日コース
 5月20日に1日コースのバスハイクを行いました。今年度は、いわき海浜自然の家へ出かけ、キーホルダー作りをしてきました。昼食は、バイキング形式で、ラーメンやカレーライス、ピラフなど好きなものを選んで食べることが出来ました。ゆったりとした時間の中でいつもと違う雰囲気を過ごすことが出来ました。7月29日と10月14日にも予定しています。
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☆半日コース
 半日コースは、5月13日と6月10日にショッピングセンターエブリアへ出かけてきました。ショッピングセンターということもあり、それぞれ買い物を楽しんだり、フードコートで軽食を食べたりと楽しい時間を過ごしてきました。年4回予定しています。

保育士 矢内 直美

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「休日の療育活動を実施して」重症心身障害児者 はまなす病棟
 6月27日(土)ご高齢になっている親御さんに代わって患者さんとの関わりを深めていただくために行っている休日の療育活動も今年で2回目となりました。天気が良ければ、ご家族に協力していただき正面玄関花壇の花植えを行う予定でしたが、あいにくの雨模様で制作活動を行いました。三角に切ったおりがみを一本の紐につないで旗飾りを作っていただきました。これらは、病院の廊下や療育棟に飾らせていただきました。
 その後、ボランティアとして横浜から来ていただいたプロのアーティスト集団「心魂プロジェクト」のみなさんの歌やダンスをご披露していただきました。患者さんたちのすぐそばで歌ってくれたり、太極拳を見せてくれたりしてみなさんとても感激していました。また、みんなで一緒に楽器演奏したり、歌に合せてヨガ体操をしたりして、一緒に楽しむ姿も見られました。 昼食は特別に和菓子がついて、普段とは違う食事を楽しんでいました。患者さんにとってご家族との良い思い出がまた一つ増えました。

保育士 山本 真美

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 私が、初めて受け持った患者さんは、脳性小児麻痺、精神発達遅滞の男性患者さんでした。
 3歳の時に全盲と診断されていて入院当初は歩行できていたが、病状の進行とともにADLが低下し、現在は自力での体動はできず全介助での移動である。食事は、摂食訓練により介助をすることで自力摂取ができている。簡単な言葉でのコミュニケーションは可能で、排尿は、「ズボン」と言って教えることができるため、尿器介助している。生活のリズムもできており、食事の時間、好きなテレビの時間(日曜日にのど自慢があるなど)が分かり、スタッフの声も聴き分けることができている。夕食後は、大好きな演歌のCDを聴きながら一緒に歌っている。また、日常の中で何度も同じ単語を繰り返したりする。不快なことや強い口調で何かを言われたりすると、表情が硬くなったり、不穏状態になり「キイキイ」声を発したりすることがあった。
 私たちは、普段、目や耳から入ってくる情報で周囲の状況を認識するが、目が見えないことで不安になり、何度も同じ言葉を繰り返すようになったのではないかと思われた。言葉を発した時に、言葉を遮ったり、否定したり、あるいは、無視をしたりすることは、その人に対する尊厳が感じらせず、自分を受け止めてもらえないと思ってしまい、信頼関係を築くことはできなくなってしまうのではないかと考えた。私はまず自分を覚えてもらうために、自分の名前を言ってから話をすることで名前を覚えてもらった。挨拶や話掛けるときは、手を握りながら声掛けし、何度も同じ言葉を繰り返す時は、名前を呼んで「わかったよ」と受け止め、「○○だから待っててね」のように言葉かけを行った。そうすることで、不穏状態は殆どなく、表情も穏やかに過ごすことができたのではないかと感じた。あるとき、手を握りながら挨拶をしたときに、手を離そうとせず、笑いながら「離さなんねーなー」と、初めて自分から言葉を発してくれた。関わりのなかで自分だけに見せてくれた出来事に、とても嬉しかったのを覚えている。
ttr138p2p3_10 重症心身障害児(者)の看護で大切なことは、目が見えないということとはどういうことか、声に出して意志表示ができないということとはどういうことか、自分で体を自由に動かせないということとはどういうことか、そのことを想像し、心の声を聴く、気づきが必要だと思った。目を見つめて声を掛けたり、体に触れ、タッチングやマッサージなどで筋緊張をほぐし、笑顔を引き出す看護をすることが大切だと思った。私たちが、毎日の生活の中で笑ったり、楽しいと感じたり、美味しいと感じたり、気持ちいいと感じたりしていることがすべて、生きる力に繋がるのだと思う。快の刺激を多く与えるような看護が重要だと感じた。
 今後もこの経験を活かし、患者さんが安心した療養生活が送れるように援助していきたい。
はまなす病棟 看護師 本田 和子

 

食中毒について

ttr138p2p3_17 6月のジメッとした天気から、7月に入りいよいよ夏本番ですね。そしてこの時期から食中毒の発生が多くなってきます。特に6月~10月の間は要注意です。今回は、家庭での食中毒予防についてお話しします。
 食中毒は、主に食中毒菌とその毒素、ウイルスによって発生します。食中毒菌で有名な、O-157や大腸菌などがあります。食中毒菌の特性は様々ですが、以下の3つを守ることで食中毒を予防することが出来ます。食中毒予防の3原則「つけない」「増やさない」「やっつける」です。
 「つけない」は、調理をする前や生肉や生魚を触った後、食事をする前、トイレに行った後などに手を正しく洗うことです。手には見えない雑菌が沢山付着しています。そこで、食品や調理器具などに触れると食中毒菌が付いてしまい口まで運ばれます。 次に「増やさない」は、食品の適温を守り、保存することです。スーパーから買ってきた食品を長時間置きっ放しにしてしまうと、食品に付着していた菌が繁殖し、食中毒になりやすいのです。また、生ものや出来上がった料理を何日も冷蔵庫に保存しておくのはやめましょう。
 最後に「やっつける」は、食品を十分に加熱するということです。ほとんどの食中毒菌は、加熱によって死滅します。中心温度が75°C以上になるように調理しましょう。また、調理した後の器具は、よく洗い、熱湯をかけて殺菌しましょう。台所用殺菌剤も有効です。
 安心安全な食事にするためにも、食中毒予防を心がけましょう。

栄養管理室 管理栄養士 松本 祐耶

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 左図は直立二足歩行を行う上で最も大切な骨盤と下肢の骨を同じ類人猿でも四足歩行のチンパンジーとヒトで比べたものです。直立二足歩行を可能にするための骨・骨格系の改変状態とその意義を列挙してみます。
 1.腸骨翼(骨盤を構成する上外側の骨の突出)が横に張り出した御椀上である事。この部から発し大腿骨上外側部に付着する中殿筋が二足歩行の左右バランスを保つのに大きな役割を果たす。
 2.大腿骨が骨盤に対し内側を向く事。体の重心線と足部との距離が狭まり歩行の片足支持期の姿勢保持が容易となる。
 3.足母指が他の4本の足指と平行である事。二足歩行の効果的な蹴り出し力を増す。
 4.足指の骨の組み合わせがアーチ状である事。接地時の足部変形と身体に加わる衝撃の緩和に役立つ。

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